終わらない夏休み 『涼宮ハルヒの憂鬱』

夏休みが終わらなければいい……なんてことは、誰もが子供の頃に思ったことがあるだろう。だけど時の流れは非情で、決して止まることなく、さまざまな出来事と思い出を残し、厳然と9月1日はやってくる。夏休みは終わるのである。
ところが、夏休みを終わらなくしてしまった奴がいた。
いうまでもない、
我らがSOS団団長、涼宮ハルヒである。
2006年版『涼宮ハルヒの憂鬱』でアニメ化されなかったエピソード『エンドレスエイト』が、春から「あらためて」放送中の2009年版『涼宮ハルヒの憂鬱』で映像化された。
夏休みも残り2週間という8月17日、ハルヒに呼び出されたSOS団の面々は、プールでひとしきり遊んだ後の喫茶店で、「残りの夏休みを思いっきり遊び倒すわよ!」と宣言される。そうして、ハルヒに逆らうわけにはいかない宇宙人、未来人、超能力者と、いやいやながら付き合う普通人キョンは、連日ハルヒの立てたお遊び計画をこなしていくことになる。しかし、あることがきっかけで夏休みの最後の2週間が延々とループしていることが発覚する。8月31日の24時になると、リセットボタンを押してセーブしたところからやりなおすRPGのごとく、ハルヒの不思議パワーで何もかもがリセットされて8月17日に戻ってしまうのだ。驚くキョン達だが、時空を超越した情報統合思念体の人間型端末である長門有希だけがすべてのループを記憶していた。彼女によると繰り返した回数はなんと1万5千回以上! 原因はハルヒが夏休みに何かをやり残したことにあるようなのだが……。散々遊びまくっているのにハルヒは一体何をやり残したというのだろう。キョン達はそれに気付くことができるのだろうか?
原作小説ではループから脱出できた最後のシーケンスだけを扱っているので、アニメでもそうなるだろうと思っていたら、予想を裏切ってアニメでは複数回にわたって脱出に失敗したシーケンスまで描写している。つまりハルヒのしたいことを思い付けずに終わり、次回もほとんど同じ内容の話を放送するという、新作アニメにあるまじき事態に陥っている。ちなみにこの記事を書いている時点で4回だ。『エンドレスエイト』が4回連続で放送されているのだ。
ただ――、
毎回話の流れは同じだけれど、演出やカット割りは各話で異なっているし、キャラの着ている衣装も毎回違っていて、同じシーンを使いまわして手抜きしているわけではない。同じように見えてすべて新作なのだ。回を重ねるごとに真相に近付いている演出も見受けられる。要するに製作側はわざとこういう構成にしているのである。ネットでの反応を見ると、これは主人公達と同じような焦燥を視聴者に感じさせるのに成功している。この話のオチを知っている原作既読者も「ははん、やっぱりそうきたか」と上から目線で見るのではなく、「いつ終わるのだ?」とドキドキしながら見ざるを得ない。自分も小説を読んでいる口だが、こういう手法でサプライズを仕掛けてくるとは予想外だった。
ネットの噂では『エンドレスエイト』は6話分用意されているという。また、別の噂では8月いっぱいまで『エンドレスエイト』が続くというのもある。8月いっぱいって10話近く消費することになるので、まずないとは思うが、いずれにせよ、視聴者が飽きる前に解決編を放送したほうがいいんでないの?、と思うのだが……いったい、どうなることやら。
公式サイト
http://www.haruhi.tv/


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