痔瘻根本治療体験記 その5

入院二日目 手術当日

何回か夜中に目が覚める。

寝る前に二種類の下剤を飲んだものの便意は一向にこず、もしこのまま便が出なかったらどうなっちゃうの? と不安に思っていると、夜4時ごろにトイレに行きたくなり、無事(?)下痢便を出す。

朝7時、病室で朝食を摂る。献立はロールパン、コンソメスープ、野菜ジュースだけの簡素なものだ。手術当日の食事はこれだけだ。

しばらく後、部屋に看護師がやってきて、下剤で空っぽになったはずの腸をさらに奇麗にするために浣腸をする。最低5分は我慢して出すように言われたが、1分も持たずに便意がきてトイレに駆け込む。

その後、内視鏡による大腸検査を受ける。大腸に便が残っていないか確認するためなのだそうだ。モニターで自分の腸の中を見るなんて妙な感覚だが、その途中で腸のひだにポリープのような物が見つかった。今回は何もしないが痔が完治した後に案内を出すので、その時に詳しく調べましょうと言われた。

大腸で見つかったものは気になるものの、今は目の前の手術に集中だ。検査室から病室に戻ると手術着に着替える。

それほど間を置かず看護師が呼びに来て処置室で点滴を受ける。そのまま寝ているのかと思ったら、腕に針を刺したまま点滴の袋を吊るしたポールを持って部屋まで戻らされた。手術は午後からだが、この時点でまだ10時だった。

そこから手術まで暇だった。11時までは水分を取ることを許されていたが、それ以降は一切の飲食は禁止。テレビを観たり、スマホをいじったりして過ごす。不思議と緊張感はない。

予定では14時に手術開始だったが、30分ほど延びて14時30分ごろに看護師が病室まで迎えに来て手術室に向かった。

手術室に入ると早速手術台の上で背中を丸める姿勢を取らされ、脊椎に麻酔を打たれた。そのまま俯せになると、台が動いて尻を持ち上げた感じで「く」の字の姿勢になった。周囲には手術着姿の主治医の先生ともう一人の先生、数人の看護師が手術台を取り囲んでいる。そして待つこと10分、下半身の感覚がなくなってきた。麻酔が効いているか確かめるために、尻の辺りで何かをして「痛いですか?」と訊かれた。触られた感触があるだけで痛みは感じない。「普通なら相当痛いことしているんだけどね」と先生が言って手術が始まった。手術中は電気メスのチリチリという音が聞こえるくらいで、自分の尻で何が行なわれているのか全く分からなかった。痛みは全くない。時折血圧計が腕を締め付けるので、表示された血圧の数値を見て「ちょっと高めだな」とぼんやりと考えていた。

そうこうしているうちに唐突に手術は終わった。手術台の上で仰向けになり、いつの間にか運ばれてきたベッドに横滑りで移って、病室まで運ばれた。病室の壁掛け時計を見たら15時15分。病室を出てから1時間もかからず、俺を苦しめた痔瘻は取り除かれたのだ。

手術後2時間は絶対安静でテレビやスマホを見るのも駄目。喉の渇きを覚えたが、水を飲んでいいのは4時間後。昨夜は下剤のせいであまり眠れなかったのでウトウトしながら時間が過ぎるのを待つ。

スマホが解禁になるととりあえず家族に手術が終わったことをLINEで伝えた。

麻酔が徐々に切れてきて麻痺していた足が動くようになってきた。麻酔が切れたら痛いんだろうなあ、と思っていたが、ちょっと尻がチクチクする程度で恐れていたような痛みは無い。

主治医の先生が病室に来て、手術の内容を説明してくれた。初診で裂肛痔瘻との診断だったが、その奥にもう一本瘻管があり、浅いところの管と「エ」の字型に繋がっていたらしい。けっこう深く切ったので通常は1ヶ月で傷が塞がるところだけど、2~3ヶ月かかるかもしれないとのことだった。

21時の消灯前に看護師さんが痛み止めの頓服薬と睡眠薬を持ってきてくれた。今のところ痛みは我慢できる程度なので、痛み止めは飲まずに眠剤のみ服用して就寝。

つづく

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