【本】化物語(ばけものがたり)

西尾維新の小説は、ちょっとくどい文体と台詞回しが特徴で、基本的に主人公視点の一人称でストーリーが進んでいく。一人称の小説って主人公に感情移入できなければ面白くないので個人的にはなるべく避けているのだが、化物語はそんな懸念はまったく必要なかった。言葉遊びにも似た毒舌とツッコミ、時にはメタ的なセリフも混じって、全体的に明るい雰囲気に仕上がっている。『化物語』というタイトルから、何かおどろおどろしい話を想像してしまうのがちょっと惜しいところだ。
高校二年から三年に進級する狭間の春休みに恐ろしい体験をし、それ以来怪異に魅せられた主人公・阿良々木暦(あららぎこよみ)が、同じく怪異に取り憑かれた少女達を助けていくストーリー。5話構成で、1話ごとにヒロインが増えていき、最後にはハーレム状態に。といってもこのお話はラブコメではない。阿良々木はデレデレしたり、ウジウジと悩んだりしない。恋愛的な意味では、阿良々木は全編を通してのヒロイン“戦場ヶ原ひたぎ”と早々にくっついてしまう。
この戦場ヶ原という彼女は極端な毒舌で、言いたいことをズバリと言い、人が聞きたくもないことをはっきりと口にする。そして何食わぬ顔で本音をポロリと漏らし、それを聞いたこちらはグッときてしまう――なんだこいつ、口は悪いけど可愛いやつじゃんかよ、てな具合に。こういうのをツンデレって言うんですか? なんかすごく好きになってしまったよ。阿良々木のほうも彼女を無下にせず、同情でもなく、隷属でもなく、言葉の裏に隠された素直な好意を汲み取って、戦場ヶ原と並び歩こうとする。
ああ、なんか、とても清々しいですよ、この二人。これだけでも、この本を読む価値があるってもんだ。
ところで、この小説も夏にアニメ化されるとのこと。
なんでもかんでもアニメ化すればいいってもんじゃないだろ! と思いつつ、ほとんど会話の面白さで成り立っている作品をどう映像化するのか楽しみにだったり(^_^;)
アニメ公式サイト:http://www.bakemonogatari.com/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です