涼宮ハルヒの『「相対性理論」を楽しむ本』

みんな元気してる? あたしはSOS団団長の涼宮ハルヒ。みんな知っているわよね。知らないアホンダラゲは後で体育館の裏に来なさい。懲らしめてあげるから。
そんで、こっちの二人は、副団長の古泉君と無口キャラ担当の有希。

どうも古泉一樹です。

長門有希。よろしく。


今日は二人に頼みたいことがあるの。

僕と長門さんにですか? 彼と朝比奈さんが見当たらないようですが……。呼ばなくてもよろしいのですか?

ああ、キョンとみくるちゃんはちょっと事情があって来れないのよ(※)。まったく団長のあたしを差し置いてどこでなにしているんだか……。今度会ったら罰金よ、罰金! みくるちゃんには恥ずかしいコスプレしてもらうわ!
(※キョンと朝比奈みくるのfigmaはまだ発売されていません)
(…………)

まあ、それは置いといて、本題いくわよ、本題!
あたしね、最近SF小説をよく読むんだけど、その中で相対性理論やら量子論やら難しい理論が出てくるのよ。まあ、あたしも概要くらいは解っているつもりだけど、もうちょっと詳しく知りたいと思ったわけ。そうすれば小説の理解が深まったり、面白さが増したり、矛盾に突っ込んだり、理論を知らないでいるよりずっとずっと楽しめるんじゃないかと思ったの。そんでSOS団の誇る優等生二人ならいろいろ教えてくれるかな~、な~んて考えたわけ。

なるほど相対性理論に量子論ですか。現代物理学を支える二大理論をマスターしようなんて、涼宮さんの学究心にはホント恐れ入ります。ただ僕も高校生ですし、興味はありますが、涼宮さん以上の知識を持ち合わせていません。こういうことは長門さんが得意だと思いますが……。

そうね、有希ってたくさんの本を読んで何でも知ってそうだもんね。それになんだか宇宙人っぽいし。

(ビクッ!)

(相変わらず鋭いですね、この人は)

どうですか、長門さん、説明をお願いできますか?

解った。上手く言語化できないかもしれない。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。それでもよければ。

全然オッケーよ。解らないところは一緒に勉強しましょ。
じゃあ、相対性理論からいってみよう!

了解した。
アインシュタインがまとめた相対性理論には特殊相対性理論と一般相対性理論の二つがある。「特殊」と「一般」、この二つの言葉のイメージから大多数の人間は「特殊」のほうが難解という印象を受けるかもしれない。だけど実際は逆で、特殊相対性理論のほうが簡潔で理解しやすい。この場合の「特殊」は「限定的」と言い換えたほうが適切。特殊相対性理論とは限定した条件下での物体の運動に関する相対性を説明した理論。特殊相対性理論の前提である限定的条件を取り除き、あらゆる条件下での物体の運動について論じたのが一般相対性理論。アインシュタインは特殊相対性理論の発表後、10年の時を費やして一般相対性理論を完成させた。アインシュタインのような天才でも10年かかった。でも10年で理論の完成にこぎつけたのは有機生命体としては上出来。それだけ一般相対性理論は難解と言える。だから一般相対性理論はとりあえず無視して、特殊相対性理論の触りだけ説明する。

へえ、有希ったら、普段は無口だけど、こういうことになると饒舌になるのね。

黙って。
特殊相対性理論は物体が等速直線運動していることが前提となっている。これが先ほど言った限定的条件。相対性理論にはもう一つ大前提となっている条件がある。それは、光の速度は観測者がどのような状態であっても一定であるということ。具体的には秒速30万kmと観測される。観測者が止まっていても動いていても秒速30万km──それ以上にもそれ以下にもならない。光速が秒速30万kmであるとして、古典物理学や人間の常識に基づくと、静止している観測者に秒速100kmで近付いている物体から光が発せられたとき、その光の速さは秒速30万100kmと観測されるはず。でも、そうはならない。接近する物体が光速の99%で動いていても、そこから発せられる光は秒速30万kmと観測される。

そこんところが、よくわかんないのよね。どうして「光は一定の速度に見える」のかしら?

言語では説明不可能。あえて言うならば、世界の仕組みがそうなっているとしか言えない。確かに理屈では理解しがたいことかもしれない。だけど、これは様ざまな実験や観測によって得られた厳然たる事実。

事実だから受け入れなければならないということですか。

そう。だけど、見方を変えれば、相対性理論は光速が一定に見えることを説明する理論とも言える。

ふうん、そうなんだ。

話を続ける。
難しい話は抜きにして結論を述べると、特殊相対性理論によって次の三つの事柄が導き出される。
1.運動している物体の時間は遅れる。
2.運動している物体の質量は増加する。
3.質量とエネルギーは等価である。
1と2については、物体の速度が光速に近付くほど時間の遅延、質量の増加が顕著になってくる。人間の日常的な速度域では、時間の遅延量、質量の増加量は誤差として認識もできないほど微々たる量であるため、古典物理学ではこれを無視してきた。

時間の遅延は「ウラシマ効果」としてSFなんかでよく取り上げられていますね。亜光速宇宙船に乗って帰ってきたら、地球では何倍もの時間が流れていたっていうアレです。

そう。でも厳密には「ウラシマ効果」は一般相対性理論での話。特殊相対性理論では「ウラシマ効果」は説明できない。

そうでしたか。覚えておきます。

3は「E = mc^2」という式が有名。Eはエネルギー量、mは質量、cは光速。光速の二乗に質量を掛けたのがその物体の持つエネルギーということ。光速は秒速30万km、その二乗は900億という大きな値となる。つまり、わずかな質量の物体であっても非常に大きなエネルギーが秘められている。一滴の水を全てエネルギーに変換したら関東大地震クラスの地震を起こすことが出来ると言われている。

それって結構怖いわよね。

大丈夫。一部の放射性物質を除き、通常の物質は安定しているから質量がいきなりエネルギーに変換されるということはない。

そうなんだ。安心した。

特殊相対性理論の概要はこんなところ。もっと詳しく説明する?

う~ん、話だけ聞いててもなかなか理解は進まないわね。ねえ、有希、なにかわかりやすい本とかないの? キョンみたいなアホでも相対性理論の欠片が理解できるような。

ある。これがオススメ。


ふむふむ、確かに難しい数式を使わずに解りやすく説明してあるわね。これ読んでみることにするわ。しばらく借りてもいいかしら?

いい。でも中の人的には上のリンクからamazonに飛んで購入してほしい。

へ? 中の人? なにそれ?

なんでもない。

じゃあ、あたしはもう帰るわ。二人とも今日はありがと。

バタン。タッタッタッタ。
やれやれ。科学に興味を持つのは結構ですが、とんでも理論を思いつかなければいいんですが……。涼宮さんの場合、「とんでも」では済まされませんからね。

そう。

でも、どうしていきなり相対性理論だとか言い出したんでしょうか。

上位存在が涼宮ハルヒに自分の読んだ本を紹介させようと考えた。

上位存在? 情報統合思念体のことですか?

違う。情報統合思念体でもなければ天蓋領域でもない。この世界のあらゆる事象に対して上位に存在する者。『その者』が涼宮ハルヒに目を付けた。情報統合思念体は『その者』の正体について解釈と定義を保留している。通俗的な言葉を用いれば「全ては謎」。

むむむ、なにやら不穏なことになってきましたね。とりあえず今日のところはこの辺でお開きにしますか。

そう……。


あるーはれーた日のことー♪
タララ タララ タララッタッタ♪


▼出演▲
SOS団のみなさん

本のレビューはこんな感じでいこうと思うんだけど、いかがでしょう?w