涼宮ハルヒの『反逆者の月』

──放課後、県立北高校、文芸部兼SOS団部室にて
ねえキョン、月ってさ、どうしていつも同じ面を地球に向けているのかしら。


潮汐力かなんかの影響で自転と公転が一致しているからだろ。

つまんない答え。

お前こそつまらん妄想を思い付いたのならいますぐやめろ。

ふん。

不思議に思えても自転と公転が同じなのは割とよくある現象なんだよ!

いいえ違うわ。月は異星人の地球侵略のための前線基地なのよ。月の裏側に秘密基地があって地球人の目に触れないように常に同じ面を見せるようにしてあるんだわ。

アポロの撮った月の裏側の写真には秘密基地など写っとらん。最近月へ行った無人探査船もなにも見つけていない。

NASAは異星人の基地を見つけたけどパニックを恐れて公表していないに違いないわ。むふふ、これは陰謀のにおいがするわね。

陰謀などない。だいたい、その異星人とやらが星の自転を制御できる技術を持っているなら、さっさと地球を征服しちまうと思うがな。なぜわざわざ月に基地を作ったりするんだ。

人間が動物を狩るときカモフラージュしてこちらの姿が見えないようにするでしょ? あれと同じよ。異星人は月の裏側に姿を隠して地球を観察しながら侵略の機会をうかがっているのよ。

なんでそんな手間のかかることを宇宙人がするんだ? 常識的に考えてだな───

いちいち、うるさい!
ああ、もう、ムカつくううううぅ。このバカキョンがぁああ!


いきなりなにしやがる!!

あっ!

なんだ?

思いついた!

なにをだ?

月は異星人の宇宙船そのものなのよ! ほら、デススターってあるでしょ? あれと同じよ。

デススターはSF映画の話だ。

宇宙船が故障して乗員は仕方なく地球に降りて人類の祖先になったんだわ。

どうしてそういう話になる? 侵略の件はどうなった?

いいえ、それじゃ面白くないわね。宇宙船の内部で反乱が起きたのよ。でも、反乱は失敗して反乱軍は地球に逃げた。月宇宙船は反乱軍を追放したけど指揮官を失って待機モードになったんだわ。同時に反乱軍が地球から出てこないように地球を見張らなきゃならない。月が同じ面を見せているのはそのせいよ。ほら、この本にも書いてある。


あ、あのう、ハルヒさん、その本はいったいどこから……。

月宇宙船は新しい命令を待っている。次に『彼』が動き出すのは、新艦長が就任したとき。地球人が宇宙船乗員の子孫なら地球人が艦長になることもできるはず。そうよ、それが世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒだってかまわないはずよ。いいえ、SOS団団長たるあたしこそが艦長の任に相応しいといっても過言ではないわ。

いや、あのですね。

こうしちゃいられない。キョン、いますぐ月にいくわよ!

ああ、それなら僕の知り合いにNASAに勤めている人がいて……。

古泉、話をややこしくするな。てか、いつからそこにいた!?

さあキョン、ぐずぐずしない! SOS団、遂に宇宙進出よ!

はあ、やれやれ。


『反逆者の月』は、空に浮かぶ月が実は巨大宇宙船だったという大胆な発想のSF小説です。ちなみに三部作の第一作目とのこと。月宇宙船は、大昔に『帝国』によってアルチュタニという恐るべき敵に対抗するために建造された戦艦なんですが、反乱が起きて無人となったため機能停止。そこで艦載コンピュータのダハクは、月探査に来ていた地球人コリン・マッキンタイア少佐を捕獲して無理矢理艦長にしてしまう。ダハクの乗員達はどこへ行ってしまったのか? アルチュタニとはなんなのか? 帝国はいまも存続しているのか? マッキンタイアの決断は? 地球の運命は? 物語が進むにつれて驚愕の事実が明らかになっていきます。SFですがミリタリー色も強く、スペースオペラファンにお勧めです。


▼出演▲
SOS団のみなさん